燐寸を通して街を記憶する (たるみ燐寸博物館を訪れたこと)

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喫茶店のマッチが好きでマイペースに収集している。昔ながらの喫茶店でお茶をした後は去り際に、お店の人に「お店のマッチはありますか?」と問いかける。打率は3割くらいだろうか。「昔は作っていたんだけど。。。今はライターがあるから」、「最後の1個だからお見せするだけだけど。。。」。広告としてのマッチは徐々に消えつつあるのだろうか。

 

以前に姫路を旅行した折に兵庫県垂水で途中下車をして、広告マッチの私設博物館である「たるみ燐寸博物館」を訪問した。喫茶店をはじめ様々な業種の広告マッチが展示されていた。 これらはコレクションのほんの一部で収蔵数は10000点を優に超えるとか。滅多にお目にかかれない昭和初期の木製マッチ箱まである。燐寸が好きならいくらでも過ごせると思う。

 

興味の対象である喫茶店のマッチを中心に、館長さんに解説いただきながら鑑賞した。色形、デザインのバラエティに富んだ様々なマッチが続々と登場する。おおらかな昭和らしく著作権などどこ吹く風のパロディ物に思わず微笑む。アナログで温かく、型にはまらない燐寸のデザインにのびのびとした自由を感じる。

 

館長さんは燐寸そのものだけでなく、当時の街の景色、お店の雰囲気や歴史なども含めて話をしてくれた。とめどなく流れる時間の中で誰の記憶からも零れ落ちてしまうであろうありふれた街の情景までも丁寧に収集されているような気がした。そんな燐寸を通して街を記憶する姿勢に感銘を受けた。

 

願わくはマッチ全盛期の昭和に街を駆け回りマッチを思う存分集めてみたかった。